『田園の詩』NO.41 「温かい弁当」 (1996.3.12)


 弁当の需要は多いらしく、国道などを車で走っていると、道沿いに弁当屋さんの看板
をよく見かけます。いずれも、「温かい弁当がありますよ」というような店名を付けて
います。

 買い求めてみると、本当に湯気の出ている弁当を渡してくれます。スーパーでは、
弁当が並べられた横に電子レンジが置かれてあり、自由に温められるようになってい
ます。寒い時期、温かい弁当はやはりうれしいものです。

 ところで、先日、小三の息子が私の小学校時代のことについて色々と質問してきま
した。社会科の時間に、父親や母親の学校生活の様子を調べているようです。学校
の建物は何でできていたか? 児童は何人居たか? カバンは?…等々、親に聞く
項目を先生から与えられていました。

 そんな中に「ごはんはどうしてあたためたか?」というのがありました。一瞬戸惑い
ましたが、担任が私より年上の先生なので、なるほどと思い、「弁当のことか?」と
聞き返したら、「ウン」といいます。中二の息子が持ってくるややこしい数学の問題は
苦手ですが、こんな質問に答えるのは得意中の得意、詳しく説明してやりました。

 今から30数年前になりますが、田舎の小学校には給食がまだなかったので、毎日
弁当持参でした。

 冬になると、教室の前に、底に金網を張った長方形の箱が置かれました。その中に
登校した順に弁当を入れます。全員が入れ終わると、当番が重い箱を≪弁当温め所≫
まで運びます。そこには乾燥機みたいな入れ物があり、三段ある棚に各学年全部の箱
を収め、下から七輪の炭火で温めるのです。


      
    小学校には私が通っていた時の遺構はほとんどないので、写真で紹介できません。
     〜当家の猫4匹は、冬場は暖かいストーブに頼りきっています。 (08.1)

 私の昔話をどれだけ理解できたか分かりませんが、息子達は興味深げに聞いてい
ました。あの蒸れたタクアンの臭いと、木造の寒い教室で食べた弁当の温かさは、
今でも鮮明に思い出すことができます。

 落語で「サンマは目黒に限る」というのがありますが、昔も今も、「弁当は温かい
のに限る」といえそうです。                (住職・筆工)

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